スタッフと一緒にレッスン!お太鼓結び・その2
きもの町で毎年新作をリリースしている京袋帯。「普通の名古屋帯は結べるけど、京袋帯はどうするの?」「京袋帯で調べても着付け方が分からない!」という方もいらっしゃるかと思います。きもの町の京袋帯で、基本のお太鼓結びをする方法をご紹介します。
前回ご紹介したのは、「全通柄」という上下左右のない連続柄の帯での結び方でした。(詳しくはこちら)
今回は、少し難しい「お太鼓柄(ポイント柄)」という部分的に柄付けされた帯の結び方をご説明します。以下のような方は、ぜひご覧ください!
- お太鼓柄の帯(胴部分とお太鼓になる部分に柄がある帯)できれいに柄を出して結ぶ方法を知りたい。
- お太鼓柄の帯ではなくても出したい柄を決まった位置で出せるようになりたい。
- 柄の配置の美しいバランスが知りたい。
- そもそもお太鼓柄って何?
お太鼓柄(ポイント柄)の京袋帯・名古屋帯とは

「お太鼓柄」の帯とは、お太鼓結びをしたときに見える部分に柄がつけられている帯です。
胴に巻いたときに前に出る部分と、後ろのたれの四角い部分にメインの柄があります。飛び飛びにポイントにだけ柄があるので飛び柄やポイント柄といった名称で呼ばれることもあります。
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「お太鼓結び」とは、名古屋帯・京袋帯の一般的な帯結びで、四角い形をしています。
定説では、江戸後期に亀戸天神の太鼓橋にちなんで深川芸者衆が結んだのが始まりとされています。ただその時代は、帯そのものが現在のものとは違う上、結び方も帯揚げ帯締めを使わず異なる方法で結びます。
現在のように帯枕・帯揚げ、帯締めを使用して固定するお太鼓結びは、明治~大正にかけて一般に広まり、女性の帯の代表的な結び方として定着しました。
大正時代に、一重太鼓を結ぶのにちょうど良い帯として名古屋帯が開発され、昭和初期には名古屋帯でお太鼓結びをしたときに表に出る部分にのみ柄付けがされた帯が登場します。これがお太鼓柄(またはポイント柄、飛び柄)の帯です。
つまりお太鼓柄の帯とは、お太鼓結びが女性の帯結びとして定番化してから誕生した、比較的新しい時代の帯です。
表裏全面に柄が織りだされた長い帯より経済的で結びやすい点、お太鼓の四角の部分を額縁として見立て、絵画のように美しく柄を表現できる点が優れています。ただし、お太鼓結びに最適化されたデザインのため、それ以外の変わり結びには向きません。また、ご体型に合わせて柄が出る位置を調整して巻かなくてはいけません。
お太鼓柄/ポイント柄のお太鼓結びの結び方
お太鼓柄の帯の場合、前に出したい柄の位置から逆算して巻き始めの位置を決めます。
少しややこしいですが、一度覚えてしまえば、柄出しに迷うことはなくなります。ぜひ練習してみましょう。
前回同様、基本の結び方は以下の方法で行います。
1.後ろ結び
2.時計回りで体に巻く
3.結び目はお太鼓どめで留める。
必要なもの
- 帯板
- 帯枕
- お太鼓どめ
- 仮紐 1本
- 京袋帯(お太鼓柄)
- 帯揚げ
- 帯締め
お太鼓柄の結び方手順
- 前に出したい部分を確認します。
- 柄を出したい位置に当てて、体に巻いてみます。
- 後ろで手と手を合わせます。右手から左手までの長さが1周分の長さとなります。
- 体から外し、右手の位置と左手の位置を合わせて片手でまとめて持ちます。
- て先側に向かって、4で測った長さと同じ分の長さを取ります。
- これが体に2周巻く分となります。初めに測った赤が2周目、青が1周目です。
- 青の束が巻き始めになります。初めに測った方は手を放し、2回目に測った青の方を持ちます。
- これを1周目として体に巻いていきます。
- 胴に巻いて後ろで手を合わせます。
- 合わせたら、右手(たれ側の手)でまとめて持ちます。
- もう片方の手で、て(短い方)を上に持ち上げます。
- 右手を返してたれを上に重ねます。
- ての折り返し部分に親指が掛かった状態となるので、しっかりと引き締めます。
- 下の折り返し部分も指をかけて締めます。
- もう1周巻きます。
- てを掴んで引き締めます。
- 帯の下線部分をお太鼓どめで留めます。胴に巻いた帯2枚まとめて留めます。
- 前の柄がきれいに出ています。
- ここからは通常のお太鼓結びと同様です。
てを前に持ってきて預けておきます。 - たれの根元の方を広げます。
- たれを前に持ってきてお太鼓の位置を決めます。
山を決めたら、内側に帯枕を当てます。
このような状態です。 - 帯山の真ん中を持って後ろに回します。
- 左右の手で、それぞれ帯端と帯揚げ(帯枕の紐)を持ち直します。
- やや前のめりになって背筋を伸ばし、帯山を背負い上げます。
- 胴に巻いた帯の上に帯枕が乗ってる状態です。
- 帯枕が背中から離れないよう気を付けながら、帯枕の紐を結びます。
- 結び目は帯の中に入れ込みます。
- 帯揚げは邪魔にならないよう仮結びしておきます。(ここできれいに整えて結んでもOKです)
- たれの中を整えます。説明画像では分かりやすいようにたれを上げています。
実際に行う時はたれは下ろしたまま中に手を入れて整えてください。 - 根元をきれいに広げます。
余りが長い場合は、角を折り込みます。 - 中が整いました。
- 仮紐を当てて、お太鼓の下線の位置を決めます。
- ここで決めた位置がお太鼓の大きさとなります。
大きさの目安は、帯の下線~おはしょり線くらいです。(年齢、体型、好みによります) - 下線の位置が決まったら、たれの内側に紐を掛けます。
紐と一緒に帯の端と端を持ってピンと張ります。 - 紐に沿って指で軽く折り上げます。
- 折り目の真ん中付近を片手で持ちます。
- もう片手で残りのたれをたくし上げます。
こんな状態になります。 - たれ先の長さを調整します。
親指と中指で帯端を持って、人差し指を伸ばします。
指先に帯の角が当たる感覚で長さを確認してください。 - たれ先の長さも決まったら、仮紐を前で結びます。
お太鼓が崩れないようにまっすぐ前に巻いてゆるまないよう結んでください。 - クリップで預けていたてを外します。
- てはお太鼓の中へ横向きに通していきます。
- 通す位置はお太鼓のすぐ内側です。
- てが出ている方とは反対側から手を入れます。
- て先をつかみ、お太鼓の中に通します。
- て先はお太鼓の幅より数センチ出るようにします。
指2本分、または指の第1関節までと自分の指を基準に決めると分かりやすいです。 - 残りのては、根元側で折り込んで始末します。
こちらもお太鼓から数センチ出るくらいの位置で折ってください。 - お太鼓結びの形ができあがりました。
構造を見るとこういう状態です。折りたたんだたれを、てでまとめています。
最後にこれを帯締めで押さえます。 - 帯締めの真ん中を持ちます。
- 手をお太鼓の中に入れ、帯締めを掴みます。
中でこうなっている状態です。 - 帯締めを通します。
- 帯締めをぐっと前に引いて、しっかり引き締めます。
- この時、帯締めを引っ張りながら、お太鼓の帯が重なってモタついている部分をトントン叩いてならすとゆるみなく締まります。
- 帯締めを結びます。
(帯締めの結び方はこちら) - 帯締めを結んだら、帯の下線を留めていた仮紐は外してOKです。
- 帯揚げも結び、前面を整えます。
(帯揚げの結び方はこちら) - バランスを整えて完成です!
初めの逆算するところが、慣れるまでは難しいかもしれません。
概要をまとめるとこのようになります。
- 前に出したい柄の位置を決める
- そのまま巻いて1周分の長さを測る
- 2と同じ長さをての方向にむかって取る。
- 3で測ったところが1周目の巻き始め。
基本のこの流れを頭に入れて練習してみてください!
動画お太鼓結びの結び方※準備中
お太鼓柄の結び方動画は準備中です。お楽しみに~!
お太鼓柄のバランスときれいにできないお悩み
お太鼓柄ならでは悩みどころは柄の出し方です。前の柄はど真ん中でいいの?お太鼓の四角の中の柄の位置にルールはある?そんな疑問にお答えします!
前の柄はずらすって本当?
A.胴に巻いた帯の前部分の柄は、一般的に中央より少し右か左にずらすと格好いいとされています。ですが、ど真ん中にしても問題ありません。ご自分のいいと思う位置でOK!
柄をずらす場合、ずらしすぎに注意です。人間の胴は円筒形になっていますし、袖が重なるので、体の側面の方に回り込むとほとんど見えなくなります。
衿の延長線内、またはバストの内側に収まる位置で、やや中心を外すくらいが美しいです。

ずらすのはルールではありませんので、中央にしてもOKです。なんとなくレトロな印象になります。

前の柄はずらすとされている理由は、おそらく真中心にするとかえってわずかなズレや歪みが目立つこと、胸元やお腹が強調されやすいこと、和服に限らず日本的な美意識では左右対称やど真ん中を避けて斜めに外すのが粋とされたことなどが理由だと思います。
それも帯のデザインや、なりたいイメージによりますので、ご自身の良いと思う位置に合わせてみてください。
お太鼓部分の柄は四角の中心にするの?
A.お太鼓部分の柄は、少し上の方にすると視点が高くなって格好いいです。しかし、これにもルールはありません。
上の方にするといっても無理に配置しようとしなくて大丈夫です。お太鼓の四角の上辺に帯枕の縁を当てると、帯枕の厚みの分持ち上がって、自然とやや上寄りに柄が出ます。そうすると下の方に余白ができて、すっきりと見えます。

飛び飛びに柄があるデザインの帯も、やや斜め上のほうに柄を置くと小粋な雰囲気になります。

前の柄を合わせるとお太鼓の柄が出ない
A.極力たれ側にずらして巻くか、前はあきらめてお太鼓優先にしてください。または切って別布を継ぐか、作り帯として加工するしかありません。
前の柄を出した上で、お太鼓の柄をきちんと出すには、柄から柄までの長さが十分に必要です。
画像を参照してください。

①は前の柄の中心、②の結びどまりは2周巻いて結び留める位置(お太鼓どめで留める位置)、③はお太鼓のスタート位置です。
①~③までの距離は、着物を着た状態での胴まわり半周分+30cm以上は欲しいところです。帯の柄位置の標準寸法はあるのですが、必要な長さはご体型や補正具合によりますので、すべての方に合う長さというものはありません。ちなみに、昔の帯の中にはここが本当に短いものがあります。
後から伸ばすことは不可能ですので、前をあきらめて巻くしかありません。
もしくは、切って別の布を継ぎ足す方法があります。②~③の間は結ぶと隠れますので、その位置に別の布を継いで長さを出します。ただし、この加工はきもの町では行っておりません。
もしくは、胴に巻く部分とお太鼓部分を分けて成型した作り帯にすることをご検討ください。
帯山やたれ先が斜めに!水平な線にならない
A.帯の布目を通しましょう。
帯は縦糸と横糸を組み合わせて織られています。その糸の目が渡っている方向に沿って、まっすぐお太鼓の線を決めるようにします。
帯山の線やお太鼓の下線を決めた時に、帯の両端を持ってピンと横に張ってみましょう。指の感覚で帯の地の目が通っているか確認してください。横糸の線に沿って水平の線が取れている場合、ピシッと1本の糸がまっすぐ通っている感触が分かると思います。

まっすぐの線が取れていない場合、引っ張る方向が食い違って、一直線に糸が通っていない感触になります。ボヨンボヨンとバイアスがかかっている感じです。
見えないので手の感覚がすべてです。指で帯の糸の目が通っているか分かると、まっすぐ決まるようになります。

お太鼓柄の帯の場合、お太鼓の四角の中に柄が美しく収まるようなデザインとなっているため、バランスの崩れが目立ちやすいです。
まっすぐ水平の線が取れるように練習しましょう。
どうしても結べない時におすすめ作り帯
頑張って練習したけど、どうしてもできない!そんな時は、作り帯という選択肢もあります。
あらかじめ帯結びの形を作っておき、紐とフックで着用する帯です。
「お太鼓の柄の出方がきれいでした。」「お太鼓結びが私には難しかったので、簡単に着ることができて本当に助かっています。」とご好評いただいている京都きもの町の作り帯。
ぜひご検討くださいね。

*加工のみの注文ページです。帯は別でお買い上げいただくか、もしくはお手持ちのものを送っていただくこととなります。
※きもの町の作り帯はお太鼓部分と胴部分に分かれています。切らない加工はできかねます。
きもの町の京袋帯で基本のお太鼓結び♪
毎年新作がリリースされるきもの町のオリジナルの京袋帯。
着物好きさんも満足のデザインはもちろん、織り特有の立体感、華やかさと素材感が魅力です。
今回ご紹介したように、お太鼓柄の帯の場合、帯の長さとご体格によっては、必要な長さと柄の位置が合わない場合があります。
きもの町の京袋帯は、全長約3m80cmと十分な長さがありますので、普通体型~ふくよかめの方にもちょうどよく楽しんでいただけるかと思います。

京袋帯のアレンジ
名古屋帯といったらお太鼓結びしかなくてつまらない
そんな方のために、いろいろな変わり結びもご紹介しています。
銀座結び
ネコミミ結び
リボン太鼓
後見結び

きもの町受注担当。九州出身、沖縄を経由し、花と着物と競馬場の京都生活を満喫中。ブログでは商品情報やコーディネート、着付けの豆知識を発信しています。