粋で大人っぽい兵児帯の結び方「後見結び(こうけんむすび)」
女性の浴衣帯として、最近は兵児帯(へこおび)の人気が高まっています。
軽く柔らかいため、初心者さんにもふんわりとした表情のある帯結びを作りやすいのが人気の理由です。しかしそれだけではなく、幅約30cm以上と八寸帯と変わらないくらいの広さがあるので、お太鼓系の結び方もできますし、しかも裏地や芯がないため比較的涼しく楽ちん!
着物に慣れた方は応用を利かせて大人の兵児帯を楽しんでいただきたいと思います。
今回は、織りのしっかりした兵児帯で結ぶ「後見結び(こうけんむすび)」の結び方をご紹介します!
なんと帯枕や仮紐なし!兵児帯の後見結びのおすすめポイント
後見結びは下記のような方におすすめ。
- 粋で大人っぽい変わり結びをしたい
- 貝の口のような直線的な帯結びをしたいけれども半幅帯だと体型に合わない
- お太鼓のある結び方をしたい
- しかし仮紐や帯枕は使いたくない!
これらが全部叶います。人とは違ったカッコいい帯結び、かつ余計な小物は必要なし!
注意点としては下記です。
- お太鼓部分に折り跡がつく場合も
- 今回ご紹介する結び方では、帯の裏面が見えます。
帯山に片ひだを作ってタックを取ります。折り癖がつきやすい素材の帯の場合は、お太鼓部分に跡が残ってしまう可能性がありますのでご注意ください。
また、今回ご紹介する方法の場合、羽根部分に帯の裏面が見えます。
きもの町の兵児帯でしたら素材はポリエステルなので、取れないほどの跡がつくことはほぼありませんし、裏面も糸の渡りなどはなく平らなので見えても問題はありません。
町スタッフK池渾身の兵児帯の後見結び
結び方を早く知りたい方は、こちらは飛ばしてOKです。
この後見結びは、町スタッフK池が結べるようになりたいとずっと憧れてきた帯結びです。
貝の口のような直線的かつアシンメトリーな形が魅力。初めて見た時から「あのかっこいい結び方をぜひ覚えたい!」と長年結び方を調べ、練習し、そして2023年に後見結びに必要な菱枕の取り扱いがきもの町でも始まったことで、結び方をマスターしました。
そんな大好きな後見結びを夏も結びたい!しかし、暑い夏場は紐1本でも減らしたい、帯枕を背負うなんてとても無理!でもやはり菱枕がないと帯山の部分が安定せず、後見結びの魅力であるキリッとした形を作れません。
帯枕のいらない半幅帯の貝の口や吉弥結びをしてはどうかというと、小さくペタンコ過ぎてK池の体型には似合わない。
なんとしても兵児帯で後見結びを結びたい!その一心で、帯枕なしで帯山を支える方法を考案しました。
仮紐なし、帯枕なしの兵児帯の後見結び、ぜひK池と同好の方にご覧いただければ幸いです。
兵児帯の後見結びの結び方
まずは通常の後見結びをおさらい
兵児帯の後見結びの結び方も、基本は京袋帯(名古屋帯)と同じです。まずは通常の後見結びをおさらいしていただければと思います
基本の構造としては、半幅帯の吉弥結びが近いです。
たれを上に掛け、てと交差して折り上げるように結びます。その際、たれ先を上に引き抜かず下に残します。
吉弥結びのおさらいはこちらから
兵児帯の後見結びに必要なもの
必要なものは下記の通りです。
- 兵児帯(しわふわ加工は不可)
- 帯締め
- クリップ1個
「兵児帯」と一口に言っても、質感やサイズなどは千差万別です。
お店によっても違いますが、きもの町商品の中でもかなり異なります。きもの町の商品では、大別すると織りのしっかりした平たい地の兵児帯と、薄手でくしゅくしゅのプリーツ加工をしたしわ兵児帯の2種類があります。後見結びでは、前者の平たい織り地の兵児帯がおすすめです。しわふわ兵児帯では、直線的な形が作れませんので、まったく美しくなりません。
説明画像では「露芝 金茶色」を使用しています。しっかりした質感で、芝草の柄が大人っぽいおすすめの帯です。
また、帯結びを支える帯締めが必要です。今回は、帯留付きの二分紐を使用します。
結び方の手順
- 浴衣を着て帯板をしたところからスタートです。
- 兵児帯を帯端から2つ折りにします。
- 折りながら、だいたい腕の長さ分くらいを取ります。
ここを「て」と言います。 - てを肩に預け、2つ折りにしながら胴に巻きます。
- しっかりと引き締めながら2周巻きます。
- 2周巻いたら、てを脇の方まで引き出します。
- てを下ろし、たれ(胴に巻いてきた長い方)を上に重ねます。
- たれを上に通し、ひと結びします。
- しっかりと引き締めます。
この時、結び目がぐしゃぐしゃにならないよう、平らに引き締めてください。 - ゆるまないよう、てと胴の帯をクリップで留めておきます。
- もう1度たれを下ろし、結び目の下から上に通します。
こうすることで結び目が2重になります。 - たれを下ろしたら、帯山の位置を決めます。
たれ先を膝くらいの位置に合わせ、帯の上線の高さで帯山を決めます。 - 帯山の位置を決めたら、片ヒダに折りたたみます。
- 2重になっている結び目の、2巻き目を下に引き出し、帯山を結び目のすぐ上に乗せます。
- 帯山が結び目の上に来ました。
- 1番上のたれをよけておき、引き出した結び目の2巻き目を端から畳みます。
- 横から見たところです。
結び目の2巻き目を引き出したので、長い輪になっています。
その輪の部分をまとめて巻き上げるように畳みます。 - 畳んだら、胴に巻いた帯の中に入れ込みます。。
- この時、きれいに入れ込んで隠さなくてもOKです。
結び目が固定され、さらに畳んだ帯の厚みが帯枕代わりになります。
ここまでできたら、てを留めたクリップは外して大丈夫です。 - たれを下ろします。
帯山は片ヒダの状態で固定されています。下の方は自然に広げます。 - ここからは後見結びや吉弥結びと同様です。
たれを斜め上に折り上げます。
折り上げて羽を出す方向は、てが出ている方です。 - てを通しますが、その前に、羽の下端を折り込み台形に整えると通しやすいです。
- てをたれの中に通します。
- バランスを整えます。
美しいバランスは、京袋帯(名古屋帯)の後見結びと同じです。 - 帯締めを通します。
通す位置はての上、たれのすぐ内側です。 - 帯締めをしっかりと結びます。
今回は、帯留付きの三分紐を使用しますので、結び目をたれの中に隠します。
通常の帯締めをする場合は、後ろでしっかりと仮結びしてください。 - 帯締めの結び目をたれの中に隠します。
- 帯結びが出来上がりました。
- 右回りで後ろに回します。
- 後ろに回ったら、通常の帯締めの場合はきれいに結び、形を整え完成です。
いかがでしょうか?
ポイントは、たれを上にひと結びした後、もう1回たれを結び目に通して二重にする点です。
その後、二重になった部分を引き戻すことで、帯山の位置が決まります。引き戻した余分なたれを折りたたみ、胴の中に入れ込んで帯枕の代わりとしています。
こうすると、帯枕なしでも結び目が固定されキリッとした高さが出ます。
余分なたれを折りたたんで結び目に挟んでいるので、そこだけは厚みが出て、多少暑さを感じるかもしれません。それでも、熱がこもりやすい素材の帯枕や胸にかかる紐がない分、とても軽くて快適ですよ。
※ご注意※
この方法で結べば京袋帯や名古屋帯でも帯枕はいらないのでは?そう思われた方もいらっしゃるかもしれません。ですが、兵児帯と袷用の名古屋帯では重みや質感が違います。また、帯枕なしでは着物姿の帯として美しいとされる厚みや高さが出せません。そのため、袷の名古屋帯で後見結びを結ぶには菱枕が必須です。
今回の方法は、夏のカジュアルな装い向けとして覚えていただければと思います。
京都きもの町の兵児帯で大人の浴衣姿に☆
今回は平たい兵児帯を使用した、粋で大人っぽくかっこいい!「後見結び」をご紹介しました。
浴衣とのコーディネートや仕上げのバランスのとり方によって、落ち着いた雰囲気にもなりますし、任侠映画の姐さん風にもなります。
スタッフK池が憧れてやまない後見結び。もっと上手に結べるよう練習し、分かりやすくお伝えできるよう精進しますので、皆様もぜひK池と一緒に後見結びを春夏秋冬楽しんでくださいね!
使用した兵児帯「露芝 山吹茶」は落ち着いた雰囲気で、和のモチーフの浴衣にも合いますし、意外と大胆なデザインの浴衣にもマッチします。
しっかりした織りで帯結びの形が決まりやすいのもおすすめポイントです。
ぜひチェックしてみてくださいね。
きもの町受注担当。九州出身、沖縄を経由し、花と着物と競馬場の京都生活を満喫中。ブログでは商品情報やコーディネート、着付けの豆知識を発信しています。