京袋帯・名古屋帯の変わり結び:後見結び(こうけんむすび)/千鳥結びの結び方

小ネタ

とにかく粋でカッコイイ!かつ上品な後見(こうけん)結びの結び方

菱枕(ひしまくら)を使った変わり結び・後見結び

皆様「後見結び(こうけんむすび)」をご存知でしょうか。
別名「千鳥」とも言い、半幅帯の「貝の口」に似た左右非対称の直線的な形、上向きにのぞく羽根が魅力的な帯結びです。

この後見結びに使用する帯枕が「菱枕(ひしまくら)」です。
一般的な楕円形の帯枕と違い、正方形になっている帯枕です。これはお太鼓結びではなく変わり結びに使用します。
先日、きもの町ショップにてこの菱枕が販売開始されました!
そこで、今回は、菱枕を使ったとにかく格好いい変わり結び「後見結び」の結び方をご紹介します。

後見結びのシーン

下記のようなシーンで、後見結びを見ることができます。

  • 日本舞踊
  • 袋帯で振袖や略礼装に
  • 京袋帯、名古屋帯でカジュアルな変わり結びとして

後見結びは、主に日本舞踊、芸妓の帯結びで見られる帯結びで、「後見結び」という名称も日本舞踊の後見人が結ぶことからきています。また、関東では半玉(おしゃくとも。京都でいう舞妓のような見習い芸妓)の帯結びとしても後見結びが結ばれます。
舞踊の時にしか後見結びは結びませんという方もいますが、そんなことはありません。袋帯で結べば、振袖や色無地、訪問着などに合わせることができますし、京袋帯(名古屋帯)でカジュアルな変わり結びとしてもOKです。
舞踊の場合は、帯を巻く際にてを幅広く取り、輪を上にして巻くという点が通常の結び方とは異なります。また、帯山のヒダの取り方、羽根の出し方は流派によって違いがありますが、全体的に大きめに、粋に結ぶのが特徴のようです。帯枕も、厚みのない板状の菱枕を使います。
一般の礼装や普段のおしゃれ着には、通常通り輪を下にして巻きます。厚みのある菱枕を使い、ヒダを取るなど華やかな雰囲気にします。京袋帯(名古屋帯)で結ぶ際はややコンパクトにし、粋になりすぎないようにすると良いかと思います。

後見結びのおすすめポイント

  • お太鼓結び以外のお洒落な結び方をしたい
  • 粋で大人っぽい変わり結びをしたい

注意点としては下記です。

  • お太鼓部分に折り跡がつく場合も
  • 今回ご紹介する結び方では、帯の裏面が見えます。

帯山に片ひだを作ってタックを取ります。折り癖がつきやすい素材の帯の場合は、お太鼓部分に跡が残ってしまう可能性がありますのでご注意ください。
また、今回ご紹介する京袋帯(名古屋帯)の場合、羽根部分に帯の裏面が見えます。

きもの町の京袋帯でしたら素材はポリエステルなので、取れないほどの跡がつくことはほぼありません。また、帯によっては裏面も美しい赤やターコイズ、コントラストの効いた黒などが使用され、帯結びのアクセントになります。

町スタッフ憧れの後見結び

結び方を早く知りたい方は、こちらは飛ばしてOKです。

この後見結びは、町スタッフK池が結べるようになりたいとずっと憧れてきた帯結びです。
たまたま見ていたテレビドラマの衣装で初めて目にした後見結び。当時、名古屋帯といったらお太鼓結びしかなくてつまらないと思っていたため、貝の口のようなアシンメトリーな変わり結びに一目で魅了されました。
「あのかっこいい結び方をぜひ覚えたい!どうやって結ぶんだろう」と早速結び方を探しましたが、その時はインターネットにも詳しい着付けの情報がそこまで載っていない頃でした。載っていたとしても、結び方の名前も知らなかったので、検索のしようがありません。
その後、偶然読んだ着物のエッセイで再びこの結び方を目にし、「後見結び」という名前を知りました。
それからは「後見結び」で結び方を調べる日々。しかし、あまり一般的な帯結びではないため人に聞いても知らないという返事、本やインターネットにも詳しい結び方までは載っていない、載っていても分かりづらい、人や本によって結び方が違う、構造や良いバランスが示されていない、形が好みではない……と、結び方を理解し、良いバランス知るまで非常に難航しました。
そして今年、2023年新作京袋帯が販売開始された時期になり、ようやく自分なりに結び方を理解できたこと、そして何よりこの結び方に必要な菱枕の取り扱いがきもの町でも始まったことで、後見結びをご紹介できることになりました!

ちなみにスタッフコーデでも、ちょくちょく練習を重ねていました。これまでは仕上がりにバラツキがありましたが、もう迷いません。
スタッフ憧れの、そして渾身の後見結びの結び方のご紹介。ぜひご覧いただければと思います!!!

後見結びの結び方

必要なものは下記の通りです。

  • 京袋帯
  • 帯揚げ 
  • 帯締め 
  • 菱枕
  • クリップ1個

基本の構造としては、半幅帯の吉弥結びが近いです。
たれを上に掛け、てと交差して折り上げるように結びます。その際、たれ先を上に引き抜かず下に残します。



吉弥結びのおさらいはこちらから

スタート

  1. 着物を着て帯板を付けたところからスタートです。

  2. 京袋帯を半分に折り、胴に2周巻きます。結ぶ、留める、ねじる等お好みの方法で固定します。
    結ぶ場合、たれが上に来るように結んでください。ては横に預けておきます。
    ここまでは通常のお太鼓結びと同じです。

  3. たれを下ろし、帯山の位置を決めます。
    帯山に写真のように片ヒダを作ります。帯幅の3分の1くらいの幅になるとちょうど良いです。

  4. 帯山を帯の上線の高さまで持ち上げ、菱枕を当てます。



  5. 菱枕は、帯の結び目の上に乗せ、体にぴったりとつけるようにしてください。

  6. 枕の紐を後ろで結びます。
    その上から帯揚げをかけ、こちらも後ろで仮結びしておきます。



  7. たれの上は片ヒダ、たれの下の方は自然に広げます。

  8. たれの長さを確認します。たれ先がだいたい膝~ふくらはぎ上くらいの長さになっているとちょうどいいです。
    長い時は、たれ先を膝の位置で折り上げて調整します。



  9. たれを斜め上に折り上げます。
    羽根を向きは、てが出ている方です。

  10. 折り上げたら、羽根の角を帯山に留めておきます。

  11. 斜めに折り上げたので、お太鼓の下線とたれ先の位置は左右で高さが異なります。
    バランスを確認し、形を整えます。


    高い方は、お太鼓の下線の角と、たれ先の角どうしが重なるように合わせます。


    角の高さは、胴に巻いた帯の真ん中くらいの位置がちょうど良いです。


    反対側の低い方の下線は、胴に巻いた帯の下線~おはしょり線くらいの高さに合わせます。

  12. バランスを整えたら、預けておいたてを外し、たれの中に通します。




    この時、羽根の幅が広すぎて通しにくい場合は、羽根の端を折り込み台形に整えます。


  13. てを通したら帯締めを通します。
    通す位置はたれのすぐ内側、ての上です。

  14. 帯締めを後ろでしっかりと結びます。

  15. 帯を回します。衿元がくずれないよう、右回り(時計回り)で後ろに回します・



  16. 紐や帯揚げ帯締めを整えます。
    まず、帯枕の紐をしっかりと前に引き、枕を背中にぴったりとつけます。


    後ろに回すと、どうしても帯枕が背中から離れてしまいますので、ピタッとくっつけます。



  17. しっかりと帯枕を背負い直したら、枕の紐を結び、帯の中にしまいます。



  18. 次に帯締め、帯揚げもきれいに結び直します。
    帯締めは、折り上げたたれや交差した羽根をすべてまとめて固定している状態ですので、ゆるまないようしっかりと結びましょう。



  19. 後ろの形を整え完成です。

後見結びを格好よく仕上げるポイント

後見結びはバランスが難しい帯結びです。ほんの少しの違いでやぼったくなったり、粋になりすぎたりします。
格好よくキリッとしたバランスに仕上げるポイントをご紹介します。

  • 菱枕を使い、高い位置で固定する。
    菱枕を帯の上線(結び目の上)に乗せ、しっかりと固定するとキリッとした形になります。
    通常のお太鼓用帯枕でも結べないことはありませんが、枕の幅と厚みがありますので、羽根が浮きます。
  • 帯山部分の幅は帯幅の3分の1~2分の1。
    帯山はヒダをとって幅を狭くします。羽根は帯山の横から数センチ出る程度にするとシャープな印象に。

  • お太鼓部分の下線が斜めになるので、それぞれちょうどいいポイントに合わせます。
    て(細い方の羽根)の下は、お太鼓の下線とたれ先の角を揃え、胴に巻いた帯の真ん中の位置に合わせます。
    たれ(大きい方の羽根)下は胴帯の下線~おはしょり線くらいの位置を目安にすると、ちょうど良い大きさになります。

  • たれ先の角は体の真ん中に合わせます。
    たれ先の角は帯結びの真ん中、後ろに回したときに背中心の位置に来ると美しいバランスとなります。

今回、前結びでご紹介しましたが、後ろに回す際に崩れやすくなります。
後ろに回したら、帯枕がピタッと体に付くよう結び直し、各部分のバランスは手で確認してください。

ヒダの取り方でアレンジ

今回、帯山は片ヒダにしましたが、ヒダの取り方で雰囲気が変わります。箱ヒダだと華やかに、両端を折り込んで台形にする場合もあります。
お好みでアレンジしてみてくださいね。



兵児帯でも結べます

ハリと固さのある素材でしたら、兵児帯でも結べます。
夏に半幅帯ではなく幅の広い帯でたれのある結び方をしたい時におすすめです。

(2024.07.15)兵児帯の後見結びの結び方ブログアップしました!
暑い夏向けに、帯枕や仮紐なしで結べるよう方法を考案。

変わり結びも楽しめるきもの町の京袋帯・名古屋帯一覧

今回は京袋帯の後見結びをご紹介しました。
スタッフK池が憧れてやまなかった帯結び。もっと上手に結べるよう練習し、分かりやすくお伝えできるよう精進しますので、皆様もぜひK池と一緒に練習してみてくださいね!
変わり結びがお好みの方に楽しんでいただけましたら幸いです。

後見結びに使用する菱枕はこちら

後見結びを格好よく結ぶために必要な菱枕。お取り扱いしております。
ガーゼのカバーに包まれており、そのまますぐにお使いいただくことができますよ。

ちなみに、K池はさらに個人的に良い使用感を追求し、自作カバーに付け替えています。

きもの町の京袋帯一覧

毎年新作がリリースされるきもの町のオリジナルの京袋帯。
着物好きさんも満足のデザインはもちろん、織り特有の立体感、華やかさと素材感が魅力です。
京袋帯だからこそできる自由自在なアレンジ。ぜひ、お気に入りの帯で、素敵な帯結びをお楽しみください!

京袋帯ブログはこちら

普通の名古屋帯は知っているけど、京袋帯はどういう帯?どうやって結べばいいの?
そんな方のために、きもの町ブログでは京袋帯についてご紹介しています。
コーディネートやアレンジに迷ったら、ブログもご覧いただければ幸いです。

京袋帯について、基本の巻き方はこちら

基本のアレンジ・銀座結びはこちら

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