【着物の仕立て】伊勢木綿反物の柄出し/柄合わせを考えてみました

木綿着物

伊勢木綿の反物・お仕立て上がりが入荷中

人気の伊勢木綿の新柄が販売中!
お仕立て上がりと反物、両方取り揃えております。
きもの町スタッフが選んだおすすめの色柄ばかり。ぜひ、お気に入りを探してみてくださいね。

反物をお買い上げの方は、お仕立ても承っております。ご希望の寸法や、柄の出し方が指定可能!
いろいろと指定して着物を注文することを「誂える(あつらえる)」といいます。
お気に入りの反物を見つけたら、理想の着物をお誂えしてみてはいかがでしょうか。
詳しくはお仕立てページから。


でも、寸法は自分のサイズを測れば分かりますが、柄の出し方はどう指定すればいいのでしょう?
追っかけとぶっつけの意味とは?正解やルールはあるの?指定によってどんなふうに変わるの?
お仕立てページを見ても、違いが想像しにくいですよね。
今回は、出来上がりの見映えを決める!伊勢木綿着物の柄合わせについてご紹介します。

  • 使用する用語や考え方はお店や和裁士さんによって異なる場合があります
  • 伊勢木綿反物をきもの町フリーサイズに仕立てる際の例です。
  • 柄合わせの可否は、反物の柄行、用尺、お仕立て寸法、好みによります。
  • 女性、男性ともに基本は同じです。

希望の柄合わせにするポイント

木綿着物の柄合わせに一律の正解はありません。ご自身が格好いいと思うかどうかで決めて大丈夫!
こうでないと間違いだとか、マナーや格式に沿わなくなるといったことはありませんので、安心してください。
ただし自分が格好良く見える柄合わせにするためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。また、仕立ての都合上どうしてもできないこともあります。

  1. 追っかけかぶっつけか
    反物の印象そのままにしたいなら「追っかけ」
  2. 格子の段
    特にこだわりがある場合は指定します。
    例:お尻の位置で濃い格子が突き合わせにならないようずらしたい、衿元はすっきり見えるよう揃えたい等
  3. 衿元の色
    顔周りに置きたい色を第一に決めましょう

以下の条件によって、理想通りの柄の出し方ができない場合があります。

  1. 反物の用尺
  2. 出来上がり寸法
  3. ご体型・着付け方

まずは基本の構成を知ろう

上記のポイントを押さえつつ、まずは反物がどんなふうに裁ち合わされているのかを見ていきましょう。
着物の縫い方ではなく、布の柄の配置についての説明ですので、パズル感覚で見てください。

着物の反物は長~い長方形の布1枚となっています。
臼井織布の伊勢木綿反物の場合、幅:約40cm(1尺5分)、長さ:約12.5m(3丈3尺)です。
これを袖、身頃、衿・衽(おくみ)のパーツごとに裁断し、寸法通りに縫い合わせて着物の形にしていきます。

生地の縦の目と着物の上下は同じです。
横幅は、袖で1幅、身頃で1幅つかいます。つまり反物幅以上の身幅や袖幅に仕立てることはできません。
袖と身頃を広げると、生地が4列並んでいる状態です。

右袖、右身頃、左身頃、左袖

前はこのような配置です。
衿と衽(おくみ)は一枚の生地を縦半分に切り、片方を衿、片方を衽にします。

<できないこと>
生地を横向きにしたり、袖や身頃の真ん中から縦に2枚つなぎ合わせるといったことは基本的にしません。
ですので、エンジ色を横向きにするとか、パッチワークにしてエンジ色だけを多くする、下半身はエンジの左右を入れ変えるといったことは対応できかねます。

※裄長さんやお相撲さんの着物などは脇に接ぎを入れる場合もありますが、あくまで特殊サイズの仕立て方です。

追っかけとぶっつけとは

この反物の配置について、柄の向きをどのようにするかの違いが「追っかけ柄/ぶっつけ柄」です。
「追っかけ柄」は、袖と身頃を広げたときにエンジ→薄色→グレー、エンジ→薄色→グレーと同じ方向に追いかけるように配置します。「追い裁ち」という言い方をする場合もあります。
「ぶっつけ柄」は、背中心にエンジまたはグレーと同じ色どうしをぶつけた配置を言います。中央に寄せるので「寄せ裁ち」ともいいます。

追っかけ柄で、右から濃い薄いとするか、左から濃い薄いとするか。
ぶっつけ柄で、背中心側に濃い色とするか、薄い色とするか。
さらに、身頃はぶっつけにして、袖はおっかけにするなど、いろいろな組み合わせ方があります。

迷った時は「追っかけ柄」をおすすめします。
色柄の出方が左右でほぼ均等となりますので、全体的な柄のバランスが反物で見たときの印象に近い仕上がりとなるからです。

格子の横段

格子の場合は、横段の位置も指定できます。
背、衽などの縫い目を越えて、横段が繋がっているようにするか、それともずらすかの違いです。
注意点として、横段の位置を調整するには生地の余裕が必要です。
身頃を1マス分ずらすとして、それに合わせてもう片方も動かさないといけませんし、連動して袖も衽もずれていきます。
反物の規格という限界の中で、出来上がり寸法と柄のパターンの大きさとの兼ね合いがありますので、すべてご希望通りにできるとは限らないことだけご理解ください。
なので横段は、どうしてもというポイントだけ指定するのがおすすめです。
例:お尻の位置で濃い格子が突き合わせにならないようずらしたい、衿元がすっきり見えるよう揃えたい等

一般的には、ずらした方がきれいに見えるとされていますが、柄の大きさ、色数、何より着用者の好みによります。
最近は、ぴったり揃える方が好みの方も増えているようです。

衿の色の濃い/薄い

衿と衽の関係は上で説明したように、1枚の生地を縦半分に裁ち、片方から衿と掛け衿、片方から左右の衽2枚を取ります。
なので、図の反物の場合はエンジ色を衿にすると、グレーが衽になります。
2反使用するなど、生地が十分にあれば両方同色にすることができますが、一般的ではありません。

衿はお顔に近い部分となりますので、ここが違うだけでも雰囲気が変わります。
お顔映りのいい色を衿にしたい場合はご指定ください。

柄合わせの指定ポイントまとめ

  • 追っかけ柄で、右に濃い色/右に薄い色
  • ぶっつけ柄で、中心に濃い色/中心に薄い色
  • 格子を揃える/互い違い/半分ずらす
  • 衿に濃い色/薄い色

大きくまとめると、上記の組み合わせでご指定いただけます。
ひとつの反物からこれだけの種類の着物が作れるなんてワクワクしますね!
ぜひ、自分だけのこだわりの柄合わせにチャレンジしていただければと思います。

柄合わせのイメージ違いの理由

きちんと指定して仕立てたのに、何となく反物の時とは印象が違う。
こだわり抜いた配置にできたと思ったのに、着てみると見え方が違う。
そんなイメージ違いが起きる場合がありますので、以下のポイントも踏まえておきましょう。

出来上がり寸法

柄の配置を決めた後、出来上がり寸法に合わせて縫製します。
寸法より大きい分は、縫い代の中に折り込んで始末しますので、見えなくなってしまいます。
特に細身の方は身頃の両端が想像以上に隠れてしまうことも。

さらにぶっつけ柄にすると、思ったよりもエンジが見えない!もしくは、思った以上にエンジばかり!といった仕上がりになる場合があります。

着付け

着付けると見える部分が限られます。
人間の体は立体で、かつ動きがあります。脇の方は奥に回り込みますし、腕も上げ下ろしをします。
平面の状態で完璧に配置したつもりでも、着付けると、見えるところと隠れるところが発生します。

たとえば、この写真の着物は「薄い色のぶっつけ(脇に濃い色)」で仕立てています。
平面図では脇の方に通ったエンジの縦縞が強い印象を与えますが、着付けると上腕部分以外のエンジはほぼ見えません。

柄合わせの効果は、反物だけ見ていては分かりません。仕立ててみて、着用して初めて分かることがあります。それもオリジナリティの1つとして楽しんでいただきたいですが、心配な方は、事前にしっかりと相談しましょう。

反物から柄合わせをしてみよう

いろいろとご説明しましたが、百聞は一見に如かずです。
実際に反物から柄合わせをしてみましょう。
例として、お仕立て上がり販売分の柄合わせを検討する様子をご紹介します。
写真はスタッフが柄合わせのかたわら撮影しましたので、分かりにくい部分があるかもしれません。
ご参考になれば幸いです!

貝割格子 グレー(冬景色)

アイスグレーに縦筋の入った濃いグレー、横段に薄グレーを重ねた約20cm角ほどのブロックチェックの反物です。
ほぼ縦に2分割の大きな構成なので、衿と衽が濃い/薄いでハッキリと分かれます。
またぶっつけにすると、ほぼどちらかの色しか見えない着物になりそうです。
さらに、格子のブロックが大きいので、揃えるかずらすかでも雰囲気が変わります。

追っかけ/ぶっつけ

背中心を基準に身頃の配置を考えます。
背中心から肩幅までの寸法より外側は隠れてしまいますので、目安として物差しを置いてみました。
この反物の場合、両端から2寸(8cm弱)くらいは縫い代に隠れて見えなくなるものと考えます。

基本は追っかけですが、一応ぶっつけでも見てみます。
薄い方のぶっつけ

濃い方のぶっつけ

薄い色は、仕立てるとほぼ薄いグレー1色になります。
濃い色の方は着ると、背中が濡れているみたいに見えるかも……。

今回は追っかけにすることにしました。
追っかけの場合も、濃い方を右にするか左にするかで変わります。

これはどちらでもOKなので、上前(左身頃)を基準にどちらにするか考えます。
K池は薄いグレーが好きなので、上前の背中心側に薄い色、脇の方に濃い色の並びにすることにしました。背中から見て、右から薄い→濃い→薄い→濃いの配置です。
追っかけ(上前の背中心側に薄い色)」で決定です。

格子の横段

横に薄いグレーの段が入っています。
この段を左右で揃えるか、ずらすかで印象が変わります。

格子を揃える

横に大きなボーダーが入ったような柄になります。
大きい縞が体を横断するので、着る人のご体型によっては合わないかもしれません。

格子を互い違い

1マスごとに互い違いに配置してみました。
素敵ですが、大きいブロック感が強いように思えます。

格子を半分ずらす

1マスの半分は重なるようにずらします。
格子の繋がりから斜めに視線が流れるので、すらりと見せる効果があります。

今回は格子が大きいため、等間隔にそろえると体が寸断されて見えるように感じました。
ということで、3つ目の「格子を半分ずらす」で決定です。

衿元の濃い/薄い

身頃の配置が決まったので、次は衿と衽です。
濃いか薄いかの2択で印象が大きく変わります。
着たときに目立つ、上前(左身頃)の配置を基準に考えます。

衿に薄い色

お顔周りがすっきりとします。

衿に濃い色

濃い色だとお顔周りが引き締まった印象になります。
これはどちらも素敵です。
他のスタッフの意見も参考にし、「衿に濃い色」を持ってくることに決定しました。

完成

出来上がりはこのようになりました!

追っかけ(上前の背中心側に薄い色)/衿に濃い色/格子を半分ずらす

K池マークはスタッフmochidaが描いてくれました(笑)
追っかけ(上前の背中心側に薄い色)/衿に濃い色/格子を半分ずらす」という指定で出来上がった着物です。
上半身は左が薄いグレー、右が濃いグレーと片身替わりのような雰囲気になり、なかなか格好よくなったのではないでしょうか。


後ろ姿のバランスもバッチリ。
格子で分断された見た目にならず、またお尻にドンドンとブロックが並ぶこともなく、スッキリと着ていただけるかと思います。

☆使用した反物・着物はコチラから

反物はこちら
お仕立て上がり

※完売分も再入荷検討中です。
しばらくお待ちください☆

三升格子 利休色×黄色(黄金畑)

山吹色、薄黄色、浅いカーキの縦縞に、淡いグレーの横段を重ねた約14cm角ほどのブロックチェック。
明るい山吹色がかわいいポイントですが、着物にしたときに黄色ばっかりになるのは避けたいところ。
また、衿に山吹色とカーキのどちらを持ってくるかで、お顔色に合う人と合わない人が分かれそうなデザインです。

追っかけ/ぶっつけ

山吹色とカーキの配分を変えたくないので、写真を撮るまでもなく追っかけに決定です。
左右の並びは、明るい山吹色が上前の胸元に出たらかわいいと思うので、上前の背中心側に山吹色、脇の方にカーキが来るようにしました。

格子の横段

始めのグレー(冬景色)ほど格子の段は大きくないので、あまり気にしなくても大丈夫そうです。
ただ、揃えるのだけは、やはり胴が寸断されたように見える気がしましたので無しです。
ということで、互い違いか半分ずらすかの2パターンで比べてみました。

格子を互い違い

リズミカルな印象になって素敵です。

格子を半分ずらす

どちらもよく見えますね。
K池の好みで半分ずらす方に決定しました。

衿元の濃い/薄い

難しいのは衿の色です。
反物の半分が衿になるとご説明しましたが、バチ衿仕立てにした場合、さらに半分は内側に折り込まれます。つまり、衿として表に見える部分は、反物の約1/4です。
この縦3色の構成の反物の場合、衿の色の候補は4パターン考えられます。

薄い色:山吹色/グレーが入った薄色(少し山吹)
濃い色:グレーが入った薄色(少しカーキ)/カーキ
単に濃い色と指定しても、カーキとグレーではまったく違います。せっかくですので、全色合わせて比較してみました。

衿に濃い色(カーキ)

衿に濃い色のカーキです。格好いい印象ですが、好みが分かれるかもしれません。

衿に濃い色(グレー・少しカーキ)

濃い色のグレーを表にしました。スッキリしますが、わずかなカーキが気になります。
また、そうすると衽が薄い方となりますが、上前の中央にも薄い方を配置しています。薄い&薄いでメリハリに欠ける印象になりそうです。

衿に薄い色(山吹色)

衿に薄い色の山吹色の面を表に。明るくて素敵ですが、合わせにくいと感じる方もいらっしゃるかも。

結局この3つのどれでもない最後の1つ、衿に薄い色・グレー(少し山吹色)の方を使うことになりました。

完成

完成がこちら!

追っかけ(上前の背中心側に黄色)/衿に薄い色(グレーを表)/格子を半分ずらす

追っかけ(上前の背中心側に黄色)/衿に薄い色(グレーを表)/格子を半分ずらす」とかなり細かい指定が入っています。
上前の胸元は狙い通りに山吹色が出ていてカワイイです。
袖口や衽のカーキがほどよい締め色となっており、心配だった衿もグレーでスッキリと見えます。

後ろ姿です。

背中一面カーキ、または全部山吹色とはならず、反物通りの印象です。
格子の横段もきれいに半分ずれています。互い違いにしても良かったかもしれません。
全体的に黄色のかわいさとカーキの個性の配分がちょうどよく、おしゃれに出来上がったかと思います!

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伊勢木綿のお誂えは京都きもの町で!

今回は、伊勢木綿反物お仕立ての、柄合わせについてご説明しました!
ご紹介した柄合わせは「お仕立て上がり販売分としてきれいに見えるか」を基準にしています。ですので、できるだけ多くの方に似合いそうな合わせ方を採用しました。
柄合わせの良し悪しはお好み次第ですので、他の合わせ方のほうが好きだなと思った方は、ぜひそのようにご指定ください。
1つの反物から生まれる無数の組み合わせ、着用者による差分も、お誂えの面白いところです。
秋冬の1枚に、伊勢木綿着物を加えていただければうれしく思います。
今からすぐにお仕立てに入れば、10月初旬にはお届け可能。
何かご不明な点がございましたら、お気軽にご相談くださいね。
きもの町スタッフが、理想の着物作りのお手伝いをさせていただきます!

※なお、個別の反物について今回のブログ写真のように実際に配置してお見せするといったご要望にはお答えできかねます。

最後にもう一度ポイントをおさらいしますので、お仕立てをご検討中の方はしっかりとご確認ください。

  1. 追っかけかぶっつけか
    反物の印象そのままにしたいなら「追っかけ」
  2. 格子の段
    特にこだわりがある場合は指定します。
    例:お尻の位置で濃い格子が突き合わせにならないようずらしたい、衿元はすっきり見えるよう揃えたい等
  3. 衿元の色
    顔周りに置きたい色を第一に決めましょう

以下の条件によって、理想通りの柄の出し方ができない場合があります。

  1. 反物の用尺
  2. 出来上がり寸法
  3. ご体型・着付け方
今期の入荷分はすべてK池が柄合わせチェックしました

※お仕立てには約40日頂戴いたします。ご着用日までのお日にちに余裕をもってお申込みくださいませ。
加工業者の休業期間(年末年始・GWなど)を挟む場合は、通常納期よりも約10日〜2週間遅れでの仕上がりとなります。

柄合わせを考えてみました・続き

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